「蜀桟道図」の作者で山水画の名人

1845年(弘化2年)~1921年(大正10年)

足立雪山は袋井市指定文化財「蜀桟道図」の作者。1845年(弘化2年)周智郡山梨町山科(平宇)の足立三家のうちの中店(孫八家)の当主、甚五郎の四男として生まれた。本名は孫吉。この頃、足立本家(孫六家)は子供が恵まれず、孫吉の幼少時に本家の養子となった。しかし、孫吉が3歳の頃に本家に女児が生まれたため、長じて分家し紺屋を営むことになった。孫吉は見付(磐田市)の絵師・福田半香に画を学び、特に山水に長じ、技術的にも優れ、達筆な画家として多くの作品を残している。このうち、「蜀桟道図」は袋井市指定文化財にもなっている。

雪山門下には天竜市二俣の佐々木竹華がある。雪山は渡辺華山門下、十哲の一人、永村茜山(島田市金谷町)を慕っていたが、茜山の死後の明治32年9月、金谷に遊び土地の有志と図り城山公園に茜山の顕彰碑を建立した。また、明治41年に、遠州三河の画家たちで組織した東海絵画協会に属し、重鎮として遠州画壇を背負って活躍した。

雪山の画風は主に山水に力作が多いが、人物画や花鳥も良い作品を残している。絵はいわゆる文人画といわれる南画が主体で、技巧的にも秀で力強い筆致の輪郭線や、しっとりとした落ち着きのある色彩は、雪山の人柄を偲ばせる。現在、雪山のコレクターが所蔵する作品の多くは雪山晩年の作品であるが、若年時は稼業の紺屋の関係もあり、多くを描けず晩年になってようやく絵に専念できる生活になったと言われいる。1921年(大正10年)3月10日、風邪で体調を崩し没する。享年76歳。

【参考・引用文献】
 澤田与茂治 1988 「画家足立雪山翁の略歴並びに業跡」
 袋井市地方史研究会『ふるさと袋井第3集』
 中道朔爾 1986『遠州画人伝』

【協力】
 平宇・足立家(敬称略)